アマサケアユミ [ 甘酒歩み ] in 東京

東京甘味処漫遊記~都内大小新旧様々な甘味処を徘徊して甘酒をハシゴ酒する人の日記~

甘酒歩み

美吉 【赤坂見附@東京メトロ銀座線・丸の内線】

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 赤坂見附駅B出口から青山通りを青山方面へ進み、再びやって来た東京赤坂豊川稲荷東京別院。山門をくぐり三殿院を過ぎて、本日は二体の巨大な霊狐が見守る本殿を経由後に向かった先は。前回同様に文化会館の1階に三軒並ぶ茶屋の真ん中で商いをしている「美吉」へと足を運ぶ。

 少し離れた所から窺える昼前の茶屋は境内同様に閑散として人気が無く、挙句にあいにくの雨降りでお土産品も軒先の内で小ぢんまりと陳列され売られている。その軒の庇にぶら下がる吊り下げ旗に記された“味自慢 あま酒”の文字をシッカリ確認していると、店の奥からおじさんが現れてあれよあれよと店の中へと誘われる。その際に「甘酒」の所在を確認した後、すぐさま注文を済ませると入り口脇にある壁際の椅子へ腰を降ろす。先ずは出された麦茶を啜りつつ店内を見渡すと、お隣よりも狐感薄めで猫分多めの設えでその猫達に混ざり大小さまざまの神具や達磨が陳列されているのが見える。やがて厨房から液体が煮立つ音が聞こえてきた時、突如厨房のおじさんが、ショウガ入れますとコチラへ向き直り確認と思しき明朗な宣言する。その宣言にお願いしますと返事をすると、その途端に店内を仄かなショウガの香りが漂い始める。その香りを嗅ぎながら再び店内をぐるりと眺め、隣のテーブルに置かれたゆで卵に気を取られている最中、朱い茶卓に乗って竹でできた音叉の様なマドラー的な器具が挟んであるという、なかなかお目に掛かれない供され方をした湯呑みが差し出される。さっそくマドラーを引き抜きぐるぐると数回「甘酒」を掻き回した後に、湯呑みを手に取りショウガが香るソレをズズズと啜る。

 泡立った表面の下に隠れたトロリとした口当たりをしたアツアツの液体が、ツブツブの食感を引き連れて口の中へ流れ込んでくる。ソコから仄かな甘さがまろやかに広がり、加えてショウガのピリリとした刺激が舌の上を駆け抜けるると、そのまま鼻腔へと流れ込んでその後にはサッパリとした残り香を置いて行く。いつの間にかショウガの仕業によりホカホカした口の中は、先程までとは異なる熱気で包まれる。そんな中で舌に残る粒を磨り潰していけば、糀の甘さと風味がポツポツと花開いて行く。おじさんと歓談しながらチビチビと啜るアツアツの一杯は、肌寒さを感じる初夏にあってその能力を如何なく発揮するのを、身体の芯でジワジワと実感しつつジックリとそしてゆっくりと味わう。



[住所]東京都港区元赤坂1-4-7
[時間]8:30~17:30
[定休]不定休
[価格]300円

古町糀製造所 自由が丘店 【自由が丘@東急東横線・大井町線】

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 自由が丘駅北口前のロータリの向かいにある道の熊野神社へ向かう方の道を進み、最初の十字路を越えた先にあるLuz自由が丘の1階。ポッカリと口を開ける薄暗い建物内通路を進み、裏路地まで行き着くチョッと奥まった所で「古町糀製造所 自由が丘店」は営業している。

 大層モダンな店舗ブースには小ぢんまりした陳列スペースとカウンターがあり、その奥ではこの時間おねえさん一人で勤労中である。さて、ココ「古町糀製造所」は当然「糀」を扱った店舗で店頭にも小洒落た瓶入りの「糀ドリンク」を始め、各種「糀」関連商品を扱って居る。そして店内の設けられたドリンクスタンドではその「糀ドリンク」や「糀ジェラート」がテイクアウト出来る訳である。さっそくカウンターへ赴くとおねえさんが明朗快活な語り口で詳しく説明を始める。ソコで「糀ドリンク」が「甘酒」である事を再確認してから早速温かい「糀ドリンク」の「プレーン」を注文。ソレを受けたおねえさんがテキパキと用意を始め、やがてここ最近頻繁に耳にするスチームの噴出が店内に響いた後、差し出された蓋付きの紙カップを受け取り、支払を済ませ少し先にある熊野神社を目指す。鬱蒼と生い茂る樹木が木陰を造り出す境内を進み、社務所前にある神楽殿で浜縁の脇でカップの蓋を外す。

 立ち昇る糀の香りの出迎えを受けながら、カップ一杯に注がれた乳白色で粒感が少な目の液体をそっと啜ってみる。緩くトロリたした口当たりの液体は優しい糀の香りと、まろやかながらシッカリした甘さを口内へ満たしていく。そこに仄かに酸味が広がり舌先を覆っていた甘さを、たちまちサッと掻き消し爽やかな後味へと変えてしまう。やはり良い「甘酒」は必然的にヨーグルトに似て来るモノなのだなと実感する。やがて喉の奥へと流れ込む時に舌の上に感じる触感は、一般的「甘酒」の粒感より格段に細かくいわば粒子感であり大変飲みやすい。このあたりが「甘酒」とは一線を画する「糀ドリンク」の真骨頂なのだろう、その「プレーン」という立場上とはいえクセの無い感じでまとまってはいるが、喉の奥で貼り付くまろやかさの積み重なった甘さの主張は、その「甘酒」としての自我をしっかり主張している。とはいえ全体的に上品かつ繊細に仕上げられていて、細かい所まで気配りがされているこの「糀ドリンク」。その気配りの対象であろう世間に数多存在する「甘酒」を敬遠する人々の評価をこそ知りたいものである。



[住所]東京都目黒区自由が丘2-9-6 Luz自由が丘1F
[時間]11:00~20:00(L.O.19:00)
[定休]年中無休(元旦のみ休業)
[価格]350円

八起 【調布@京王線】

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 東京都調布市にある浮岳山昌楽院深大寺。その深大寺と云えば名物は蕎麦であり、山門を中心にして延びる参道沿いに数多軒を連ねる飲食店には、もはや蕎麦モノ以外の食べ物を見つけ出し頼む事が困難な位に、どこもかしこも蕎麦モノの食べ物で溢れかえっている。主食の手打ち蕎麦は当然の事として、サイドメニューも蕎麦にピッタリな天麩羅といった抜かりない組み合わせや、甘味も蕎麦饅頭や蕎麦粉をつかった蒸しパンとか、粉物全てに蕎麦が混入しているというある一定の層には立ち入る事すら叶わぬ濃密な蕎麦空間となっいるが、まあ訪れる客はそんな事は周知に事実だろう。そんな中で多くの店でひっそりと売られているのが「甘酒」であり、今回目指す「八起」にも通年で置かれている数少ない非蕎麦食品のひとつである。

 山門から見て左側に伸びる参道に広く設けられた間口の「八起」では、多くの年若いお嬢さん方が働いており、その点で他の飲食店とは明確な一線を引いているのが特徴の店である。その休憩所然とした造りの店頭にかかる暖簾をくぐると、石畳の土間に並ぶテーブル席は昼前だというのにすでに満席。呆然と立ち尽くしていると店員のお嬢さんに奥の座敷を勧められ、いそいそと履物を脱いで中庭の池が一望できる窓際へ陣取り早速「甘酒」を注文。しばらく池の錦鯉を眺めながら40人収容らしい座敷に独りでポツンと「甘酒」の到着をひっそりと待つ。そうして眺めた錦鯉にそれぞれ愛称を付け終えた頃、お嬢さんが静かに「甘酒」を持ってやって来た。

 青白磁の湯呑みには少し黄色味掛かった中に白く細かな斑点がたゆたっている。早速一口啜ってみると口一杯に未体験の甘さが、結構強めに漂い一斉に広がる。トロリとした飲み口の中では細かな粒がシッカリ確認でき、糀の仄かな香りに乗って舌の上をタプンと流れていく。ソレに追従するようにチビチビと飲み進めると、強かった甘さは次第に口内で馴染みはじめ、カドがとれたまろやかな甘さに変わり、口内で貼り付いていた甘さを揉み解す。そしてそこに何時までも勢いを失わずに漂い広がる糀の香りを引き立てていく。それにしてもこの甘さ何だろう。ほんのりと漂う風味がカスタードクリームの様で、軽くバニラ的な芳香が舌をくすぐる。だからといってあからさまに洋風でなく、シッカリと「甘酒」であるその優しくまろやかで、キッチリ甘いその正体を懸命に探ってみる蕎麦屋の座敷のひと時であった。




[住所]東京都調布市深大寺元町5-13-6
[時間]9:00~17:30
[定休]火曜日
[価格]320円

せたがや縁側 cafe 【松陰神社前@東急世田谷線】

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 松陰神社前駅の三軒茶屋方面に降り立てば目の前には松陰神社通り商店街が、左手の松陰神社と右手の世田谷通りを起点にして伸びている。ソコをから松陰神社へ向かいしばらくフラフラ歩いて行くと、米屋の向かいに背の高い葭簀で囲われた間口一間程度の小さな店があり、ソコこそが目指す「せたがや縁側 cafe」である。

 開店直後の店にはおねえさんが一人、開店準備に追われ店先に縁台や丸テーブルを設えている真っ在中。ソレを通りの反対側からしばらく見守り、やがて準備を終えたと思しき所を見計らい葭簀の奥へと足を運ぶ。小ぢんまりした店内では先程のおねえさんが店の最深部にあるキッチンスペースに佇みコチラを見ている。早速「甘酒」をホットで注文をすると、カウンター上での作業を止め冷蔵庫から容器を取り出し準備に取り掛かる。その光景を確認後、手持無沙汰なひと時を店内でも眺め過ごそうと、棚やテーブル上に並ぶ“麹”系の調味料やオーガニックな焼菓子を眺める最中、コォーッという蒸気の噴出音に振り返ると、紙のカップに注がれた完成間際の「せたがや縁側 cafe」の「玄米甘酒」を確認。カップに蓋をしてもらい代金を支払った後、店を出た所でコレをドコで頂こうかと思案する。対面にある米屋の軒先にフリーの縁台もあるが、やはりこの地のランドマークへ向かうべく紙コップ片手に商店街を進む。

 松陰神社を入って直ぐの神楽殿で浜縁の横に立ち白い上蓋を開けると、荒い泡が一面を覆うその僅かな隙間からカフェオレ色をした液体が見える。立ち昇る香りは確かに玄米的素朴さで、その中にほんのりと漂う糀の存在が確認できる。一口啜ってみるとサラサラとした口当たりで瞬く間に隅々へと行き渡り、ソコに米の濃い風味と僅かな野菜の青臭さ、そして舌を優しく刺激する酸味で一斉に染め上げる。ソコに糀由来のまろやかでありながらシッカリとした甘さが徐々に厚みを増し始め、ソレに伴って糀の風味も徐々に濃く香りを満たしていく。しかしココである違和感にぶち当たる。コノ「玄米甘酒」、幾ら飲み進めてもその中に「甘酒」にあって然るべき粒感が一切見当たらないのである。つまりはコノ「せたがや縁側 cafe」の「玄米甘酒」は、一切の固形物を排除してその栄養分のみを凝縮、純天然由来滋養強壮栄養飲料へと特化したモノといえる。そんな超近代的アプローチの「甘酒」を、松陰神社の片隅で啜っているというのも因縁深いとか思ってみたりする。





[住所]東京都世田谷区若林4-20-12
[時間]11:00~18:00
[定休]日曜日
[価格]300円

歴史茶屋 両国縁処 【両国@総武本線 都営地下鉄大江戸線】

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 総武本線両国駅を東口から出てほぼ正面にある横綱横丁の細い路地を進むとやがて京葉道路へ出る。ソレを右に折れてその先にある両国三丁目の信号を渡り、そのまままっすぐ進んだ3本目の右折路を曲りった先にある本所松坂町公園の並びに「歴史茶屋 両国縁処」はある。

 今でこそ“公園”と称されているが、この一帯は年末時代劇などでお馴染み吉良上野介の屋敷跡であり、近隣にはソレを 記した碑銘や看板や幟がそこかしこにあり、加え饅頭まで売られている観光スポットである。だが日曜日昼時の現在はただの閑静な住宅街であり、路地端で老人達が寄合い茶を啜る光景が展開されている。その寄合の真正面にある「歴史茶屋 両国縁処」の店先では、和装の御婦人が一人鉢植えに水やりの真っ最中。一声掛けて営業確認の後に、御婦人の後に付いて早速入店して入り口そばのテーブルへ向かい、井草敷きのベンチシートに腰を降ろす。冷茶を持ってきた御婦人に早速温かい「甘酒」を注文後に冷茶を一口啜る。今のこの時期は大概冷えた「甘酒」が主となり、厨房では御婦人が冷蔵庫から容器を取り出し数回振ってから鍋に「甘酒」を移す。そんな中を売店と喫茶室が併設された店内には長唄が流れこの地に則した江戸情緒を存分に醸し出す。そんな中やがて厨房からシュウシュウと液体が沸き立つ音が響き、その音が止むと少ししてから小鉢と共にお盆に乗せられた持ち手付きの朱塗り椀がやって来る。

 タップリ注がれ白く泡立った表面はまるで綿花畑の様に柔らかな質感で、フーと息を吹けばフルフルと震えズズズと啜ればまだアツアツの「甘酒」がトロトロと流れ込む。広がる甘みは熱に浮かされオボロに消えて、後にほんのりとした糀の風味だけが残る。綿の様な泡は柔らかな米粒で食感もまた綿の様に柔らかくシワシワと音を発して消える様に溶けていく。続いて二口目になると甘さはハッキリと輪郭を現し舌に染みわたり、併せて糀の風味もより一層濃くなる。ようやく本来の姿を見せた「甘酒」をしばらく堪能した後は付け合せの佃煮を摘まみ、あまじょっぱく変貌した口内へ「甘酒」を向かい入れる。すると甘さは最高到達点へ駆け上る一方で、糀の風味は抑えられるという当初とは逆転した構図が展開される。だが強い塩気は一度口内で広がると抜けきる事が困難で、あとはその塩気を伴いつつ飲む進める事になる。といった中々奥深い「甘酒」道の一端にふれた史跡の街で憩う一時であった。




[住所]東京都墨田区両国3-13-10
[時間]12:00~17:00
[定休]月曜日
[価格]500円

松屋甘味店 【大山@東武東上線】

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 駅南改札口から出て三軒のバーガーショップが軒を連ねる駅前の通りを右へ進み、踏切へ至るT字路の左に伸びるアーケード商店街が、かの有名な“ハッピーロード大山”である。アーケード内では老人達が道路を行き交い、道端ではトラックが荷を降ろしの為に駐車中と、刻一刻と変化を繰り返すチョッとした迷路を造り上げる。そ のアトラクションを攻略しながら程々に進んだ所に「松屋甘味店」がある。

 白いアクリルの行燈型看板にデカデカと記された「松屋」の横に並ぶ、計5種の文字の中にもある“大学芋”で名高い店は、自動ドアが開け放たれたガラス張りの店先にワゴンとショーケースを並べて、今もおばちゃんが“大学芋”の選別の真っ最中である。商店街にまで立ち込める甘い香りに誘われる様に、早速店にお邪魔しようと入口に赴き、一応おばちゃんに「甘酒」の有無を確認すると、やっているとの返事を頂きおばちゃんの後に付いて入店。入り口そばのテーブルに腰を降ろし、奥行きのある細長い造りのイイ具合に古びた店内に、ズラリと張り出された品書きを目で追い、あると言われていて尚「甘酒」を探していると、厨房ではシューっと液体が煮立つ音が響く。そして絶え間なく背後から香る甘い香りと、給水機の上で首を廻す扇風機に気を取られているうちに、創業年数六十余年の老舗甘味店にしては可愛らしいカップに注がれ現れた「甘酒」に、すかさず銀のスプーンを突っ込んでおばちゃんが目の前に置いて行く。

 お礼を述べ早速手に取って一口啜って見れば、お馴染み飴を煮溶かした様な素朴でまろやかな甘みが口内にトロトロと流れ込む。そしてその甘さを少しの間披露したら、そそくさと消えて行く潔さもまた恒例の味わい。ソコにフワフワと綿の様に揺蕩うかつての米粒達を、必死に追いかけてみるがスルリと身をかわし逃げて行く。なのでソレら全てひとまとめで飲み込んでやると、喉の奥で幾重にも塗り重ねられた甘さが厚みを帯び始め、一瞬カッと力強い甘さを発した後、やがてソコからオブラートが溶ける様に消えて行くのを感じる。何度か繰り返していく内に口内には仄かな甘さの残り香が漂い、やがて残る最後の一口を流し込む際には今まで散々逃げ回っていた米粒達も一網打尽に出来た。ソレらを丁寧に潰していくと匂い袋が破けた様に糀の香りがこぼれ、やがて口内の甘い香りは尽きて行くのを、背後から漂う甘い香りに負けない様にシッカリと堪能する。



[住所]東京都板橋区大山町6-8
[時間]10:00~20:00
[定休]火曜日
[価格]300円

吹上茶屋 【駒込@山手線 東京メトロ南北線】

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 国定特別名勝である六義園も休日ともなれば、普段は閉ざしている染井門を開け放って正門まで行くには多少骨が折れる駒込駅からの来園者を優しく誘い受け入れてくれる。300円の入園料を支払い鬱蒼と生い茂る樹木の間に伸びる未舗装の小路を進めば、途端に方向感覚は消失するので入り口で入手しておいた“しおり”を片手に林道を先へと進む。山陰橋を過ぎ、つつじ茶屋を廻り丘陵地を駆け上がり、吹上峰を迂回した先に広がる大泉水が見えて来れば、その脇には「吹上茶屋」が見えて来る。

 古びた竹垣に囲われた庭園の茶屋は池端に大振りな那智石を敷いた土床に、日差しを受けて目に刺さる様に輝く緋毛氈の縁台を幾つも設えて営業中である。入り口にある立て看板に記された品書きがあり、メインはお目当ての「甘酒」の他は和菓子が付いてくる“抹茶”のみで、あとはペットボトル飲料があるだけという潔さ。早速中に入って日陰になった軒の隅にあるL字型になった縁台に腰を降ろし、早速やって来た店員さんに「甘酒」を注文する。店内には床の間付の畳敷きの部屋があり、そこではちょっとしたお土産物が売られているがあまり大商いは望んでなさそうな品揃えで、かえってソコに休憩所としての矜持を感じる。などと大袈裟な事を考えつつ濃淡様々に織り交ざる庭木と池の碧に映える灰色掛かった松の幹と朱い野点傘のコントラストをしばし眺めていると、黒い御盆に乗せられた「甘酒」がやってきた。

 代金300円を支払い縁台に置かれる際に目の前を通過する「甘酒」からは既に濃厚な糀の香りと仄かに漂うツンとした刺激臭が立ち込めて捻じ込むように鼻腔へ侵入してくる。早速湯呑みを手に取り混じりっ気のない乳白色の液体を啜ると、トプトプと口内へ流れ込んできて、直ちにその高い粘度を披露して舌先にモッタリとした感触を伝えて来る。その際に発散するのは予想通り濃厚な糀の風味と想像以上の酸味が広がり、特に酸味の方は乳酸発酵のフォーマットに沿った力強さを発揮して舌を心地良く刺激してくる。鼻腔に充満する香りも日本酒から酒精が飛んだ様な感じで、ソレと共に米由来のまろやかなでいて底力を感じる甘さが浸透してくる。さながらトルコとインドとブルガリアと日本が混在したような酸味が、散策の疲労回復にうってつけで養飲料として一級品の仕上がりを見せる。そんな白い「甘酒」もやはり、ガーガーと鴨が鳴く池の畔の碧と大変良くマッチするのであった。


[住所]東京都文京区本駒込6-16-3
[時間]9:00~16:30(ラストオーダー)
[定休]年末年始
[価格]300円