アマサケアユミ [ 甘酒歩み ] in 東京

東京甘味処漫遊記~都内大小新旧様々な甘味処を徘徊して甘酒をハシゴ酒する人の日記~

甘酒歩み

吹上茶屋 【駒込@山手線 東京メトロ南北線】

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 国定特別名勝である六義園も休日ともなれば、普段は閉ざしている染井門を開け放って正門まで行くには多少骨が折れる駒込駅からの来園者を優しく誘い受け入れてくれる。300円の入園料を支払い鬱蒼と生い茂る樹木の間に伸びる未舗装の小路を進めば、途端に方向感覚は消失するので入り口で入手しておいた“しおり”を片手に林道を先へと進む。山陰橋を過ぎ、つつじ茶屋を廻り丘陵地を駆け上がり、吹上峰を迂回した先に広がる大泉水が見えて来れば、その脇には「吹上茶屋」が見えて来る。

 古びた竹垣に囲われた庭園の茶屋は池端に大振りな那智石を敷いた土床に、日差しを受けて目に刺さる様に輝く緋毛氈の縁台を幾つも設えて営業中である。入り口にある立て看板に記された品書きがあり、メインはお目当ての「甘酒」の他は和菓子が付いてくる“抹茶”のみで、あとはペットボトル飲料があるだけという潔さ。早速中に入って日陰になった軒の隅にあるL字型になった縁台に腰を降ろし、早速やって来た店員さんに「甘酒」を注文する。店内には床の間付の畳敷きの部屋があり、そこではちょっとしたお土産物が売られているがあまり大商いは望んでなさそうな品揃えで、かえってソコに休憩所としての矜持を感じる。などと大袈裟な事を考えつつ濃淡様々に織り交ざる庭木と池の碧に映える灰色掛かった松の幹と朱い野点傘のコントラストをしばし眺めていると、黒い御盆に乗せられた「甘酒」がやってきた。

 代金300円を支払い縁台に置かれる際に目の前を通過する「甘酒」からは既に濃厚な糀の香りと仄かに漂うツンとした刺激臭が立ち込めて捻じ込むように鼻腔へ侵入してくる。早速湯呑みを手に取り混じりっ気のない乳白色の液体を啜ると、トプトプと口内へ流れ込んできて、直ちにその高い粘度を披露して舌先にモッタリとした感触を伝えて来る。その際に発散するのは予想通り濃厚な糀の風味と想像以上の酸味が広がり、特に酸味の方は乳酸発酵のフォーマットに沿った力強さを発揮して舌を心地良く刺激してくる。鼻腔に充満する香りも日本酒から酒精が飛んだ様な感じで、ソレと共に米由来のまろやかなでいて底力を感じる甘さが浸透してくる。さながらトルコとインドとブルガリアと日本が混在したような酸味が、散策の疲労回復にうってつけで養飲料として一級品の仕上がりを見せる。そんな白い「甘酒」もやはり、ガーガーと鴨が鳴く池の畔の碧と大変良くマッチするのであった。


[住所]東京都文京区本駒込6-16-3
[時間]9:00~16:30(ラストオーダー)
[定休]年末年始
[価格]300円