アマサケアユミ [ 甘酒歩み ] in 東京

東京甘味処漫遊記~都内大小新旧様々な甘味処を徘徊して甘酒をハシゴ酒する人の日記~

甘酒歩み

森乃園 【人形町@東京メトロ半蔵門線 都営地下鉄浅草線】

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 A1出口から出たらソコは甘酒横丁交差点。そのまま左へ道なりに進めば茶葉を焙じる香りが立ちこめる「森乃園」へと導かれる。

 店の前では寒気を物ともせずソフトクリームを頬張り歓喜する子供達と、ソレを見守りながら茶を啜る大人達。その賑やかな集いが繰り広げられる店頭の脇を通る細い路地に、白い看板に描かれた矢印と開け放たれた扉に掛けられた“営業中”の文字が、「森乃園」2階で営業している甘味処へと静かに誘う。

 勝手口の様な入口から1階店舗奥に設けられた階段を軋ませながら上がると、数多の座席が並ぶ赤味が強い空間に外光が白く差し込む食堂然とした部屋に導かれる。入り口そばの厨房から現れたおねえさんに着席を促され、適当な場所腰を下ろした開店直後の甘味処には他に女性客が一組のみ。渡されたメニューを眺め先ずは「甘酒」の有無を確認、安堵の後にそって閉じおねえさんの再登場を待つ。やがて静かに歓談する客にふたつの緑色をした巨大なパフェを届けたその帰りしな、おねえさんに「甘酒」をお願いしてメユーを返す。声を抑える事を忘れて目前にそびえる緑色の塔を前に歓喜する二人をしばらく眺めていた数分後、おねえさんが御盆に乗せて持って来たソレは、小皿に乗った付け合せの2枚の煎餅をも圧倒する程の存在感を示し目の前に現れた。

 デカい。

 寸詰まりのタンブラーの様な茶碗にタップリ注がれた「甘酒」を見て、メニューに記された正直結構するなと思った値段の訳を知る。薄い膜を張り始めた表面には細かな粒が影を作り、全体はわずかに黄色味を帯びた白色にポチポチと透かしを拵えている。口当たりはクリーミーでトロリとした飲み口でまろやか。控えめな甘さとそれに追従する様な仄かな糀の香りを包むように広がる酸味は、味覚の引き出しを次々開け放ちながら懐かしい記憶を意外な場所から引きずり出しハタと思う。

 “粥”だ。
 これはあと一歩で“粥”になるモノだ。

 ほんのり糀の香りと甘味を効かせてトロリと優しい飲み口で素知らぬ顔で居るが、ついつい己の表面に作ってしまった薄いデンプン質丸出しの膜と、米の醸し出す仄かな酸味はまさに隠し遂せる事の無い“粥”そのものである。今は甘味と酸味の均衡がコチラ側に保たれいる感じの「甘酒」をフーフーしながら啜りその酸味もまるごと堪能しながらふと思う。ナルホドこれにショウガの風味を少しでも加えたら、途端に“病人食”への階段を駆け上ってしまうなぁと。


[住所]東京都中央区日本橋人形町2-4-9
[時間]2階 甘味処
    平 日 12:00-18:00
       (ラストオーダーは17:00)
    土日祝 11:30-17:30
       (ラストオーダーは17:00)
[定休]無
[価格]570円