アマサケアユミ [ 甘酒歩み ] in 東京

東京甘味処漫遊記~都内大小新旧様々な甘味処を徘徊して甘酒をハシゴ酒する人の日記~

甘酒歩み

八起 【調布@京王線】

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 東京都調布市にある浮岳山昌楽院深大寺。その深大寺と云えば名物は蕎麦であり、山門を中心にして延びる参道沿いに数多軒を連ねる飲食店には、もはや蕎麦モノ以外の食べ物を見つけ出し頼む事が困難な位に、どこもかしこも蕎麦モノの食べ物で溢れかえっている。主食の手打ち蕎麦は当然の事として、サイドメニューも蕎麦にピッタリな天麩羅といった抜かりない組み合わせや、甘味も蕎麦饅頭や蕎麦粉をつかった蒸しパンとか、粉物全てに蕎麦が混入しているというある一定の層には立ち入る事すら叶わぬ濃密な蕎麦空間となっいるが、まあ訪れる客はそんな事は周知に事実だろう。そんな中で多くの店でひっそりと売られているのが「甘酒」であり、今回目指す「八起」にも通年で置かれている数少ない非蕎麦食品のひとつである。

 山門から見て左側に伸びる参道に広く設けられた間口の「八起」では、多くの年若いお嬢さん方が働いており、その点で他の飲食店とは明確な一線を引いているのが特徴の店である。その休憩所然とした造りの店頭にかかる暖簾をくぐると、石畳の土間に並ぶテーブル席は昼前だというのにすでに満席。呆然と立ち尽くしていると店員のお嬢さんに奥の座敷を勧められ、いそいそと履物を脱いで中庭の池が一望できる窓際へ陣取り早速「甘酒」を注文。しばらく池の錦鯉を眺めながら40人収容らしい座敷に独りでポツンと「甘酒」の到着をひっそりと待つ。そうして眺めた錦鯉にそれぞれ愛称を付け終えた頃、お嬢さんが静かに「甘酒」を持ってやって来た。

 青白磁の湯呑みには少し黄色味掛かった中に白く細かな斑点がたゆたっている。早速一口啜ってみると口一杯に未体験の甘さが、結構強めに漂い一斉に広がる。トロリとした飲み口の中では細かな粒がシッカリ確認でき、糀の仄かな香りに乗って舌の上をタプンと流れていく。ソレに追従するようにチビチビと飲み進めると、強かった甘さは次第に口内で馴染みはじめ、カドがとれたまろやかな甘さに変わり、口内で貼り付いていた甘さを揉み解す。そしてそこに何時までも勢いを失わずに漂い広がる糀の香りを引き立てていく。それにしてもこの甘さ何だろう。ほんのりと漂う風味がカスタードクリームの様で、軽くバニラ的な芳香が舌をくすぐる。だからといってあからさまに洋風でなく、シッカリと「甘酒」であるその優しくまろやかで、キッチリ甘いその正体を懸命に探ってみる蕎麦屋の座敷のひと時であった。




[住所]東京都調布市深大寺元町5-13-6
[時間]9:00~17:30
[定休]火曜日
[価格]320円