アマサケアユミ [ 甘酒歩み ] in 東京

東京甘味処漫遊記~都内大小新旧様々な甘味処を徘徊して甘酒をハシゴ酒する人の日記~

甘酒歩み

歴史茶屋 両国縁処 【両国@総武本線 都営地下鉄大江戸線】

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 総武本線両国駅を東口から出てほぼ正面にある横綱横丁の細い路地を進むとやがて京葉道路へ出る。ソレを右に折れてその先にある両国三丁目の信号を渡り、そのまままっすぐ進んだ3本目の右折路を曲りった先にある本所松坂町公園の並びに「歴史茶屋 両国縁処」はある。

 今でこそ“公園”と称されているが、この一帯は年末時代劇などでお馴染み吉良上野介の屋敷跡であり、近隣にはソレを 記した碑銘や看板や幟がそこかしこにあり、加え饅頭まで売られている観光スポットである。だが日曜日昼時の現在はただの閑静な住宅街であり、路地端で老人達が寄合い茶を啜る光景が展開されている。その寄合の真正面にある「歴史茶屋 両国縁処」の店先では、和装の御婦人が一人鉢植えに水やりの真っ最中。一声掛けて営業確認の後に、御婦人の後に付いて早速入店して入り口そばのテーブルへ向かい、井草敷きのベンチシートに腰を降ろす。冷茶を持ってきた御婦人に早速温かい「甘酒」を注文後に冷茶を一口啜る。今のこの時期は大概冷えた「甘酒」が主となり、厨房では御婦人が冷蔵庫から容器を取り出し数回振ってから鍋に「甘酒」を移す。そんな中を売店と喫茶室が併設された店内には長唄が流れこの地に則した江戸情緒を存分に醸し出す。そんな中やがて厨房からシュウシュウと液体が沸き立つ音が響き、その音が止むと少ししてから小鉢と共にお盆に乗せられた持ち手付きの朱塗り椀がやって来る。

 タップリ注がれ白く泡立った表面はまるで綿花畑の様に柔らかな質感で、フーと息を吹けばフルフルと震えズズズと啜ればまだアツアツの「甘酒」がトロトロと流れ込む。広がる甘みは熱に浮かされオボロに消えて、後にほんのりとした糀の風味だけが残る。綿の様な泡は柔らかな米粒で食感もまた綿の様に柔らかくシワシワと音を発して消える様に溶けていく。続いて二口目になると甘さはハッキリと輪郭を現し舌に染みわたり、併せて糀の風味もより一層濃くなる。ようやく本来の姿を見せた「甘酒」をしばらく堪能した後は付け合せの佃煮を摘まみ、あまじょっぱく変貌した口内へ「甘酒」を向かい入れる。すると甘さは最高到達点へ駆け上る一方で、糀の風味は抑えられるという当初とは逆転した構図が展開される。だが強い塩気は一度口内で広がると抜けきる事が困難で、あとはその塩気を伴いつつ飲む進める事になる。といった中々奥深い「甘酒」道の一端にふれた史跡の街で憩う一時であった。




[住所]東京都墨田区両国3-13-10
[時間]12:00~17:00
[定休]月曜日
[価格]500円