アマサケアユミ [ 甘酒歩み ] in 東京

東京甘味処漫遊記~都内大小新旧様々な甘味処を徘徊して甘酒をハシゴ酒する人の日記~

甘酒歩み

三河屋綾部商店【御茶ノ水@中央本線 東京メトロ丸の内線】

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 再び御茶ノ水神田明神

 すっかり見慣れた感のある参道に立つ緑青塗れの鳥居を抜け、圧倒的存在感を発揮する彼の老舗糀屋から放たれる唯一無二の説得力は、辺りを散策する参拝客を巧みに取り込んで来る。そんな、折角だし入っとこうか?みたいなお座成りな“あやかり”の磁場を振り切って今は参道の先を行く。目の前には随神門。そこから視線を右手に向けると、真新しいオフィスビルの1階で鮮やか映える暖簾を提げて営業しているガラス張りの店。それが神田明神で商うもう一つの老舗糀屋、創業慶長7年(西暦1602年)の「三河屋綾部商店」である。

 さてコチラ「三河屋綾部商店」は先の老舗糀屋とは老舗とは対極にあるモダンな建物は、1990年に建ったコンクリートで丈夫なヤツ。勇んで踏み入った小ざっぱりした喫茶スペースも、その様子は高度成長期の大衆食堂を思い起こさせる趣で、昭和40年代を忍ばせる戦後生まれの輩共を郷愁へと誘う設え。そしてその全ての設備は揃いも揃って赤味を帯びていていて、入り口脇の教卓の様な台も、ヌラリと光沢を放つ四角い卓の板面も、背もたれ付きの椅子の座面も、店内をグルリと取り巻くレンガ調の壁も、基礎となる柱の木肌も、店頭同様に調理場を隔てる壁の上に掲げた暖簾も、そして敷き詰められた床のタイルまでも、強弱取り混ぜて“赤”の波動で包まれている。店員のお兄さん方に注文をお願いして自由に着席後、すぐさま出された「甘酒」を代金と引き換えて全ての用意は整った。

 当然供される「甘酒」もまた正反対な造りで、彼の老舗に真っ向勝負を挑む仕上がりである。赤い縁の盆に乗せられ出された白く薄い造りの湯飲みからして逆で、ソコになみなみ注がれた「甘酒」は少々濃いめの葛湯の様である。その霧懸かった湯飲みの空に扁平した米粒が創造するいわし雲が浮かび、浮かんだり沈んだりを繰り返すのをボンヤリと眺める。どことなく赤っぽいのは店に充満する赤色を映しているからかなと考えながら、立ち昇る熱に怯えながら慎重に一口啜ってみる。

 糀が放つ目一杯の香りと精一杯の甘さが口内を席巻する。サラサラと滑らかに触る様なのど越しで口内をアッサリ通り過ぎて、至って淡泊な姿勢を一切崩さず飲み込まれていく。この全が総じて抑え目で何処までもホンノリして、それが物足りない場合はショウガ粉を振ればよい。そして最後は底に溜まった米粒を匙で掬ってこの「甘酒」は終焉を迎える事が出来るのである。


[住所]東京都千代田区外神田2-17-3
[時間]9:00~18:00
[定休]日曜 ※2月3月は水曜日定休、日曜営業
[価格]350円