アマサケアユミ [ 甘酒歩み ] in 東京

東京甘味処漫遊記~都内大小新旧様々な甘味処を徘徊して甘酒をハシゴ酒する人の日記~

甘酒歩み

天野屋【御茶ノ水@中央本線 東京メトロ丸の内線】

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 御茶ノ水駅を出て聖橋を越えた所に在る湯島聖堂沿いに進み、本郷通り本郷通りにぶつかるという珍奇な湯島聖堂前交差点を渡り右手に折れれば、ビルの谷間にそびえ立つ緑青の鳥居が見えて来る。その鳥居の脇に結界でも張られた様にポッカリと映えるにしえの景色の中で土産物を売っている、ひと際目立つ瓦屋根の家屋が創業弘化三年(西暦1868年)を誇る「天野屋」である。

 お目当ての「甘酒」は向かって左端の喫茶部で引っ掛けようと勇んで入った店内は、静寂と淡い光に満ちた伝統的休憩所の趣で設えられ、木造の長卓と椅子が並べられ置かれている。奥に開いた調理場の窓口前にはお婆ちゃんが立って、客の存在を認識後は直ちに着席位置と混雑時の相席になる旨の伝達。取り纏めに苦心する荷物置き場に椅子を勧められた後、スッとお茶を置いて注文を取り調理場に伝達。一仕事終えたらて再び調理場の窓口前にチンマリと立つ。

店内隈なく何となく淡い黄色が染め上げる店内は、場所柄ならではの夥しい数の千社札やら何やらが梁や柱に貼られ、併せて場所柄なのか趣味なのか至る所に蒸気機関車の模型が飾り置かれている。その雰囲気は一種独特のムードを醸し出し、大人達は引っ切り無しに店内を見回し、子供達は恐れおののき更には半ベソをかきながらも、目を逸らす事が出来ないで涙目で店内を凝視している。そんな子供をあやしながらお婆ちゃんが盆に乗せた甘酒を持って来る。

 400円をお婆ちゃんに支払って対峙する「甘酒」は、厚口の湯飲みにタップリと注がれていて糀の香りがプンと漂う。「天野屋」創業時より下にある天然の土室(むろ)で作られた糀をだそうで、その天然の甘みは意外にシッカリ甘く、トロリとした飲み口に乗じて口内の隅々まで入り込み染み渡る。そしてその奥には甘みと同調する様なショウガの風味が、ピリッと舌を刺激してネットリした甘みにキレをもたらす。大きくハッキリと残る米粒は御粥を彷彿とさせる食感があり、コロコロ転がる一粒一粒をモグモグ噛み締める事が出来る。ナルホド付け合せがタクアンなのも納得出来るなと、口直しに一切れポリポリ食べ進めてみる。タクアンの程よい塩気が口内に貼り付いた甘みをたちまち一掃して行く。中々熱が逃げない何時までも熱い「甘酒」を再び口に含み、改めて糀が醸し出す甘みを堪能して約150年の時間の積み重ねを噛み締めてみる。


[住所]東京都千代田区外神田2-18-15
[時間]平 日 10:00-18:00
    土曜日 10:00-18:00
    祭 日 10:00-17:00
[定休]日曜 ※12月2週目~3月末の間は無休
    海の日
    夏期休業日8月10日~17日
[価格]400円