アマサケアユミ [ 甘酒歩み ] in 東京

東京甘味処漫遊記~都内大小新旧様々な甘味処を徘徊して甘酒をハシゴ酒する人の日記~

甘酒歩み

梅家 【中野@中央本線】

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 昔はコンサートとテレビ公開放送の街だった中野は、今やマニアと文教の街へと様変わりしてしまったが、北口の中野サンモールは今も昔と変わらない趣のまま、今やマニアの巣窟と化した中野ブロードウェイへ誘っている。その中野サンモール商店街の中腹に柿渋色の木壁に焦げ茶色の文字という、チョッと可読性に難がある看板を掲げた「梅屋」がある。

 全体に落ち着いた色合いの店のその奥は暖簾で隠され良く見えない上に、更にソレを店頭に並んだ2台のガラス製ショーケースと、ショーケース脇にだらりと下げられた商品写真が連なった大判ポスターが妨害をする。そんな“おはぎ”や“いなり寿司”や“赤飯”が出迎える入り口を、ポスターをスルリと避け入店して午前11時過ぎの静かな店内の壁際に腰を降ろす。店員さん持ってきた品書きを受け取って「甘酒 小付」の文字を確認、さっそく店員さんに注文を済ませ一息ついて店内を見渡す。沢山の有名人のサイン色紙や品書きに記された以上に種類を揃えた各種“みつ豆”、それに季節モノの“あんみつ”の商品写真が貼られる木肌色の壁を眺めつつ、ソコに残る壁に掛かった品書きの手書きの書体や、囲炉裏端にある様な火棚が提げられた天井や、その天井の隅に設えたブラウン管テレビ等が醸し出す、昭和が色濃く薫る甘味処の空気グルリと眺め待つ事数分。

 目の前に差し出された木製のフグの上にはデカい蕎麦猪口の様な湯呑みに、なみなみと注がれた飴色に輝く「甘酒」が注がれ、その脇には“小付”としてテトラパックの小袋入りで豆菓子が添えられている。早速静かな店内で密やかにズズズと啜ってみると、サラサラと流れ込む液体はもはや想像通りのまろやかな甘さを湛え、その中で強すぎず弱すぎずの良い塩梅で香る糀の存在が立ってくる。最後は喉の奥で貼り付いて来る様な押しの強い甘さも控えめに、程よくサッパリとした後味を残してサラリと流れて行く。一方黄金色の液体で揺蕩う米粒達は、その時ツブテの如く一斉に流れ込みしばらく口の中を回遊すると、クニクニやプチプチといった歯応えで次々と押し潰されていく。

 そうこうしている内に時刻は正午へ向かい、人気の増した中野サンモールは次第に活気に満ちて来きて、ソレに呼応した様に店頭では持ち帰り用“竹の子御飯”が飛ぶように売れて行く。その漏れ伝わる春の香りに包まれながら、プカプカ浮かぶ米粒と追いかけっこをしながらチビチビ「甘酒」を啜る。


[住所]東京都中野区中野5-58-6
[時間]9:30~20:00
[定休]不定休
[価格]400円