アマサケアユミ [ 甘酒歩み ] in 東京

東京甘味処漫遊記~都内大小新旧様々な甘味処を徘徊して甘酒をハシゴ酒する人の日記~

甘酒歩み

福田屋 【梅屋敷@京急本線】

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 おそらく梅屋敷駅からの方が近いハズと、改札口を出て右手に進み第一京浜を越える。往く先で待ち受けるY字路の向かって左を進めば、あとは道なりに歩き産業道路をも越えて、ようやく辿り着く約11分の道のりの先にあるのが「福田屋」である。

 江戸の昔より海苔で栄えた大森は今も町中に老舗海苔問屋や小売店が幾つも残り、その古式床しい町並みの中に溶け込んでいる「福田屋」自身も、まるで市川昆監督で横溝正史原作の映画的世界を抜き出した様に町並みに在り、創業80余年という時で塗り固めた昭和的重厚さが随所ににじみ出ている。そのビンテージな空間にあって“今川焼”と記された紅い暖簾が、目に刺さるような鮮やかを放ってぶら下がっている。その紅い暖簾をくぐり店内に入ると、昭和の遺物が数多残る大衆食堂の様な設えの結構広々とした薄暗い空間の先には、液晶大画面テレビの広告の様に四角く切り抜かれ嵌め込まれた様に、目も眩むほどのまばゆい輝きの中に浮かび上がる、結婚式場にあるような見事な造りの中庭が広がっている。一方そんな異空間を眺める観測ポイントである店内は、

今川焼を焼くオヤジ。
給仕を仕切るオヤジ。
厨房にこもるオヤジ。
そしてお客もオヤジ。

という甘味処としては異例なオヤジ率100%の空間が展開しており、そんな異例な「福田屋」は供される「甘酒」は更にも増しての異例っぷりを発揮する。

 しばらくしてツイッと目の前に置かれた甘酒は、甘味処にしては至極モダンな持ち手が付いた白いカップにタップリと注がれ、そこにカップに対してかなり大きめのスプーンが突っ込まれている。肝心の「甘酒」はといえば透明度が限りなくゼロに近く、一般の「甘酒」に当然見られる米粒や酒粕や麹粒などの固形物が対流しているとか一切ない。早速啜ってみるとほんの少しの粘り気が感じられるサラリとした飲み口で、舌触りも極上に滑らかで米粒の類が何時までも姿を見せない。ほんのりとした甘さに対して酒粕系の香りが強めに香り、そこにときどき酸味が感じられるというどこかエスニカルな味わいを鑑みて、コレを総合的にまとめるならば酒粕を混ぜたヨーグルトドリンクといった感じで、そう例えると確かに意外な組み合わせになるがコレはなかなか相性が良さ気である。そういった意味では「福田屋」は古びた佇まいの割にアバンギャルドな志向なのかなと、底に溜まっていた酸味の効いた米粒を掬って口に運びながら思ったりする。


[住所]東京都大田区大森東4-35-7
[時間]9:30~20:00
[定休]木曜日
    (祝日の場合は翌日が休み)
[価格]120円