アマサケアユミ [ 甘酒歩み ] in 東京

東京甘味処漫遊記~都内大小新旧様々な甘味処を徘徊して甘酒をハシゴ酒する人の日記~

甘酒歩み

山長 【亀戸@総武本線】

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 亀戸駅の北口から明治通りに沿って、亀戸十三間通商店街のアーケードを亀戸天神へ向かってしばらく歩いて行くと、蔵前橋通りと交わる亀戸四丁目交差点に辿り着く。その交差点を渡って左に折れて、亀戸天神へ向かう矢先に香取神社の参道に架かる鳥居と、その鳥居を差し置いて前に出て構える亀戸香取勝運商店街のゲートが建っていてソコの角地で「山長」は営業をしている。

 神霊が鎮まる神域の威厳を損なわない配慮を感じる外観の店先では“焼だんご”を始めとした和菓子類と “赤飯”“おにぎり”といった軽食も売られ、道行く人々が次々に吸い寄せられるように買い求めて行く。一方で店内は甘味処となっていて、コチラも“あんみつ”に代表される和風甘味に加えて、“おぞうに”や“中華そば”といった食事も可。早速店内へ入ると外観とは異なった和風レトロモダンな設えで、二階へ通じる階段の醸し出す雰囲気は、薄暗がりの店内でより一層の趣を魅せる。その階段を駆け登ってみたい衝動に駆られながら、威勢と愛想のすこぶる良いおばさんに「甘酒」の注文をお願いする。次々に焼き上がり、そして次々と売れて行く“焼だんご”の芳ばしい香りに挑発を受けながら待つ事数分。湯呑みにタップリ注がれた「甘酒」が目の前に現れる。

 中でたゆたう液体は亀戸だけに鼈甲色をして、そこに満開のニセアカシアを沈めた様な麹達が踊っている。早速アツアツのソレを一口ズズズと上澄み部分から啜ってみると、飴系の優しくまろやかなサラサラとした飲み口と共に口内へ流れ込んでくる。コレだけだと普通の飴湯であるが、中で揺蕩う白い一団を追加招集してやると、途端にソレは本来の「甘酒」へと姿を変え甘さを追いかける様にふわっと糀の風味を伝えて来て、喉の奥を覆い貼り付く甘さをゆっくり溶きほぐして直ぐに消え失せて行く。そんな事を繰り返し飲み進めて行くと積み重なった甘さと風味はハッキリと輪郭を浮かび上がらせ、舌に残った粒をクニクニと舌と上顎で磨り潰す時、それら一粒一粒の点から濃厚な「甘酒」を醸し出し鼻腔を駆け抜けて行く。というかそもそもちゃんとかき混ぜて飲んだら最初から完成した「甘酒」なのだとハタと気付き、湯呑みをクルクルと回しながら「甘酒」から立ち昇って来る甘い香りを、外光が漏れ射す仄暗い店内で図らずも参道脇で俗世と隔絶し、威勢の良い売り声を聞きつつ、静かで賑やかしい空間に身を浸しチビチビと飲み進める。


[住所]東京都江東区亀戸3-60-21
[時間]甘味処は11:00~19:30
[定休]火曜日
[価格]480円