アマサケアユミ [ 甘酒歩み ] in 東京

東京甘味処漫遊記~都内大小新旧様々な甘味処を徘徊して甘酒をハシゴ酒する人の日記~

甘酒歩み

芝縁 【芝公園@都営地下鉄三田線】

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 芝公園駅のA4出口から日比谷通りを神谷町方面へ歩いて行けば、直ぐに増上寺の中門であり国の重要文化財でもある三解脱門にたどり着く。ソコを抜けて境内へ入ると写生をする人々のイーゼルが小さな送電鉄塔の様に建ち並んでいる。その間を通りぬけ進んだ先には木陰と緑葉に埋もれた平屋の建物が見えて来る。その何処か厳かな雰囲気を醸し出しているお休み処コソが「芝縁」である。

 白いガーデンテーブルと緋毛氈の縁台が並ぶ店先から窺える店内は薄暗く今は一人の客もいない。中に入ると格子の天井と中央がポッカリと空いたレイアウトでダンスパーティでも催せそうで、その中央部奥でおばさんがりでバレエの3番ポジションの姿で佇んでいた。まずは隅の窓際席に腰を降ろして「甘酒」を注文しようと品書きを見ると、黄色い紙で“ぜんざい”類と共に覆い隠されている「甘酒」の文字。丁度注文を聞きに来たおばさんにその旨を確認をすると、問題なく用意できるとの事で一安心の勢い乗って注文をお願いする。しばらくして厨房からシュウシュウと煮沸音が聞きこえて来はじめ、ソレを聞きながら窓の外の深緑をぼんやり眺める。まさに都会の喧騒とバッサリ切り離された異空間で鬱蒼と茂る木々に隠れたこの場所に訪れる人の姿は無く、やがて待つ事数分におばさんが盆に乗せられた湯呑みを持って来る。

 湯呑みからふわりと甘さを立ち昇らせながら、白く細かに泡立った「甘酒」は朧の様に揺らめいている。早速手に取り一口ズズズと啜ってみると一切粘り気が無く、サラサラとしたまさに白湯の様な口当たりで口に流れ込む。そのサラサラの中にある細かいツブツブの感触が見え隠れして舌の表面を撫で、そこからほんのりと優しい甘さとソレを上回る仄かな糀の香りを口内に漂わせる。正統派糀式「甘酒」ではあるがこの粘り気の無さは溶媒の性質もあるが、混入された糀粒の細かさも大きな要因ではなかろうか。そんな事を推察しながら、更に口に含んで香りと甘さを満たしながら小さな粒を舌先ですり潰しているうちに、喉の奥には折り重なった甘味が厚みを増しシッカリと貼り付く。しかしソレもほんの束の間の事。したたか潰し終えた粒は放つ糀の香りは徐々に濃度を増していき、やがて喉奥に残る甘味は溶かされて霧散し消え始める。その感覚をシッカリと確認しながら手持ってユラユラと廻す湯呑みの中では、乳白色の舞台上で白い粒達がクルクルと踊り続けている。


[住所]東京都港区芝公園4-7-35 増上寺内境内
[時間]10:00~16:00
[定休]火曜日
[価格]400円