アマサケアユミ [ 甘酒歩み ] in 東京

東京甘味処漫遊記~都内大小新旧様々な甘味処を徘徊して甘酒をハシゴ酒する人の日記~

甘酒歩み

甘露七福神 【巣鴨@山手線 都営地下鉄三田線】

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 人気の少ない休日午前11時前の巣鴨地蔵通り商店街。“とげぬき地蔵尊”を正面に見据えた左手の路地に入ると、最初の左折路の中程に「甘露七福神」はある。

 今は入り口を二匹の巨大な茶トラ模様の猫が置き石の如く封鎖中で、ソコを突破すべく喉元などを撫でている最中に入り口が開き、脚立と暖簾を手に持っておばさんが猫達と入れ替わりで現れる。その暖簾が掛かるのを眺めた後おばさんに続き店へ入ると店内にはシャンソンが流れ、天井近くの明かり窓から障子越しに外光が淡く漏れ店内を満たす。壁には商売繁盛の熊手や金魚が描かれた額などの他に、飾り棚には立派な内裏雛を筆頭に据えた雛人形と、壁際のソファー席上部には子供の姿をした七福神が並べられている。

 奥の座席に腰を下ろして開いた品書きに「甘酒」の存在を確認すると、ソコには「玄米甘酒」という何とも巣鴨的なマクロビオティック感溢れる品がある。注文も決まり注文を取りに来る間での数秒間、斜向かいの椅子で股座の毛づくろいに精を出す猫を見つめる。そして「玄米甘酒」を注文後に一息ついて茶を啜ると芳ばしい風味が鼻腔を満たす。急ぎお茶の詳細を探るべく店中を眺めていると、しばらくしてお盆に乗せた「玄米甘酒」を持って来た。

 小皿のショウガは少しつづ入れて味を調節する様にという忠告と、三年番茶のおかわりと共に目の前に置かれた器には、白と茶の斑点を散らした糊液状をしたヤツが、そのモコモコした表面の質感を強調して満ちている。

 パッと見はモロに玄米粥である。故につい無意識にソレを添えられた匙で掬って口に運ぶと、ドロリとした口当たりと共に米特有の酸味が駆け抜ける。次いでモコモコとした小さな塊達を噛むと、そこからシャキシャキとした食感と玄米の素朴な風味が溢れ出て、その味覚の奥の方でまろやかな甘さと糀の香りが舌を撫でて行く。次に直接器から啜ってみると一般的「甘酒」とはかけ離れた食感で、モッタリと口内に流れ込む様は云わば「玄米甘粥」と呼べる体裁である。ソコに来てようやくおばさんの言葉を思い出して、小皿のショウガを匙で少し掬って「甘酒」の中へ溶かし入れる。すると「甘酒」はショウガのピリッとした辛味が酸味を抑え、折しも店内に流れているピアフの "Hymne à l'amour"のサビと同調するように、奥底に潜んでいた甘さを表舞台へと押しやりソコから一気に開花させる。

 そんな演出に浸る至福の時。ソレは猫の股座さえ神神しい一瞬である。


[住所]東京都豊島区巣鴨3-37-5
[時間]11:00~18:00
[定休]木曜日定休
    ただし縁日(4日、14日、24日)は営業、
    前日の水曜日が休みになる。
[価格]540円