アマサケアユミ [ 甘酒歩み ] in 東京

東京甘味処漫遊記~都内大小新旧様々な甘味処を徘徊して甘酒をハシゴ酒する人の日記~

甘酒歩み

松屋甘味店 【大山@東武東上線】

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 駅南改札口から出て三軒のバーガーショップが軒を連ねる駅前の通りを右へ進み、踏切へ至るT字路の左に伸びるアーケード商店街が、かの有名な“ハッピーロード大山”である。アーケード内では老人達が道路を行き交い、道端ではトラックが荷を降ろしの為に駐車中と、刻一刻と変化を繰り返すチョッとした迷路を造り上げる。そ のアトラクションを攻略しながら程々に進んだ所に「松屋甘味店」がある。

 白いアクリルの行燈型看板にデカデカと記された「松屋」の横に並ぶ、計5種の文字の中にもある“大学芋”で名高い店は、自動ドアが開け放たれたガラス張りの店先にワゴンとショーケースを並べて、今もおばちゃんが“大学芋”の選別の真っ最中である。商店街にまで立ち込める甘い香りに誘われる様に、早速店にお邪魔しようと入口に赴き、一応おばちゃんに「甘酒」の有無を確認すると、やっているとの返事を頂きおばちゃんの後に付いて入店。入り口そばのテーブルに腰を降ろし、奥行きのある細長い造りのイイ具合に古びた店内に、ズラリと張り出された品書きを目で追い、あると言われていて尚「甘酒」を探していると、厨房ではシューっと液体が煮立つ音が響く。そして絶え間なく背後から香る甘い香りと、給水機の上で首を廻す扇風機に気を取られているうちに、創業年数六十余年の老舗甘味店にしては可愛らしいカップに注がれ現れた「甘酒」に、すかさず銀のスプーンを突っ込んでおばちゃんが目の前に置いて行く。

 お礼を述べ早速手に取って一口啜って見れば、お馴染み飴を煮溶かした様な素朴でまろやかな甘みが口内にトロトロと流れ込む。そしてその甘さを少しの間披露したら、そそくさと消えて行く潔さもまた恒例の味わい。ソコにフワフワと綿の様に揺蕩うかつての米粒達を、必死に追いかけてみるがスルリと身をかわし逃げて行く。なのでソレら全てひとまとめで飲み込んでやると、喉の奥で幾重にも塗り重ねられた甘さが厚みを帯び始め、一瞬カッと力強い甘さを発した後、やがてソコからオブラートが溶ける様に消えて行くのを感じる。何度か繰り返していく内に口内には仄かな甘さの残り香が漂い、やがて残る最後の一口を流し込む際には今まで散々逃げ回っていた米粒達も一網打尽に出来た。ソレらを丁寧に潰していくと匂い袋が破けた様に糀の香りがこぼれ、やがて口内の甘い香りは尽きて行くのを、背後から漂う甘い香りに負けない様にシッカリと堪能する。



[住所]東京都板橋区大山町6-8
[時間]10:00~20:00
[定休]火曜日
[価格]300円