アマサケアユミ [ 甘酒歩み ] in 東京

東京甘味処漫遊記~都内大小新旧様々な甘味処を徘徊して甘酒をハシゴ酒する人の日記~

甘酒歩み

飛鳥山さくら亭 【王子@京浜東北線 東京メトロ南北線 都電荒川線】

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 頭上、路上、地下と電車が行き交う北区王子の駅前にて、地下鉄から這い出て高架下を擦り抜け路面電車と連れだって明治通り沿いを往くと、飛鳥山公園の鬱蒼と木々が茂る高台と、その壁面に貼り付いて登って行く電話ボックスみたいな乗り物が見えて来る。

 その高台へ上がって小雨の中を傘を差して宴会に興じる花見客を横目に、真っ直ぐ奥へと伸びる路を進むと遊具と蒸気機関車が並ぶ奥の広場へと導かれ、そこの広場の一画に模範的な公園の休憩所的佇まいの「飛鳥山さくら亭」が建っている。脇の勝手口から窺える調理場から慌ただしく動き回る人影が見える一方、開店時間間際の薄暗い店内には客席に座って何かを熟読する店員さんの後姿が、入り口脇で売られていてるビニールボール等の遊具越しに見える。

 そして迎えた午前11時。開店と同時になだれ込む団体客の後ろに付いて店に入り、16席程度の小ぢんまりとした店内の入り口傍にある二人掛けの座席に荷物を置いて、料金前払いの会計口に佇む店員さんに先ずは「甘酒セット」の注文を済ませる。団体客からの矢継ぎ早の注文を注文を捌く店員さんと、独特のテンポでもって接客を繰り広げるもう一人の店員さんの二名体制で廻り始めた店内は、団体客の歓談も相まって徐々に空気が温まり始める。

 そんなこんなで待つ事数分。御盆に乗ってやって来た「甘酒セット」は、とっぷりと丸みを帯びた湯呑みにタップリと注がれた「甘酒」と、付け合せに添えられた二袋の“おかき”とい構成。フルフルと波紋を浮かべる乳白色の海に、白く細かな斑点を吹き流しながら甘い香りを漂わせる「甘酒」自体は、鼻を近づければその香りの内に潜むショウガの風味が鼻腔を刺激する。熱の冷めないうちにズズズと一口啜ってみると、サラリとした飲み口にホワンとまろやかな糀を香らせる。最初の内に口内を満たすサッパリとして柔らかな甘さは、やがてクワッと力強く口一杯に広がり喉の奥までシッカリと貼り付いて来る。しかしそれも米が奏でる細かいツブツブの食感が、舌の上をコロコロ大移動し終える頃には霞の様に朧に消えている。その口当たりと滑らかさの割には中々に濃厚な風味を湛えた「甘酒」を、先程までのかしましさと打っていつの間にかすっかり静かになった店内で、黙々と“甘味”を堪能中のおばちゃん達と共にチビリチビリと啜る。

 窓の外で雨の中でブルーシートを天地で広げて宴会を強行する花見客の姿がチラホラ見える。その尋常ではない情熱に改めて感心しつつもふと気付く。

 それじゃ桜が見えねーじゃん。


[住所]東京都北区王子1-1-3
[時間]11:00~17:00
    (ラストオーダーは16:00)
[定休]月曜日
    (但し月曜祝日時営業、翌平日休み)
[価格]350円(セット)