アマサケアユミ [ 甘酒歩み ] in 東京

東京甘味処漫遊記~都内大小新旧様々な甘味処を徘徊して甘酒をハシゴ酒する人の日記~

甘酒歩み

初音茶屋 【浅草@つくばエクスプレス】

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 浅草花やしき脇のひさご通りから言問通りへ抜ける途中、二つ目の十字路右側角にあるの「初音茶屋」へ。引手部分がハゲた黒塗りの引戸を開け中へ入ると、厨房には背の低い衝立で仕切られた客席を見据えるおじさんがひとり。入り口そばのテーブルに着き品書きを開き「甘酒」を探し、ズイッとお茶を差し出すおじさんに注文をする。

 休日とはいえ昼前とあって格子越しに見えるひさご通りに人影は少ない。ソコに来て昼前の甘味処で「甘酒」のみ注文する珍奇な客は、張り詰める沈黙の店内で「煮あずき」も中々に捨てがたいなと、時間つぶしに品書きを眺めている所におじさんが「甘酒」を携えやって来る。ズイッと静かに目の前に置かれた「甘酒」は、乳白色の中に白い粒を漂わせて大理石の様な色合い。早速甘い香りを漂わせるソレを一口含むと、舌に伝わるクッキリと力強い甘さと共に、コチラが「甘酒」だと思い腰掛けたら、思いっきり椅子を引かれた様な衝撃的風味が口内を蹂躙する。

 コレはナンだ?

 まるで“だし汁”の様なまろやかな“うま味”的風味でありながら、ソコには動物系の臭み等は見当たらない。そのふんわり広がる“うま味”に対して強めに設定された“甘さ”のバランスが、強引に“甘味(かんみ)”としての「甘酒」の体を成している。
更なる風味の追跡をする為にもう一口。たちまち脳裏には“カボチャの煮付”が浮かぶ。まろやかな中にほっこりとした甘味が広がる感じは覚えがある。そうか「甘酒」だけに酒つながりで味醂か?にしては酒精が感じられない上に「甘酒」自体の色合いが余りも白いが、ほんの少しなら判らないし世間には“白味醂”なんてモノもある。

 そんな事に感けている間、その甘露な液体にただよう米粒は連連と口内へ流れ込み、フワフワとした食感を如何なく発揮している。それらをモグモグと噛み締めて手当たり次第に潰していくと、その時々に糀の香りがポンッと弾けて舌先を優しく撫でていく。今頻りに啜っているモノが「甘酒」である事の再確認を済ませた所で、改めてズズズっと三口目を含む。そしてその際立つ風味の奥に濃密な蜜の様な芳香がある事に気付く。未精製の糖類が持つ雑味が強い甘さと煮詰めた麦芽糖的な風味とコクも感じられるが、ソレにしてはやはり白すぎるなと細身の湯呑みに満たされた「甘酒」を覗き込み考え耽る。

 この風味の正体は一体何なのか?その答えを知るのは厨房で佇むおじさんのみである。


[住所]東京都台東区浅草2-23-3
[時間]11:00~19:00
    (ラストオーダーは18:30)
[定休]火曜日定休
[価格]450円(11月~3月)